海の王者カジキに挑む スポーツフィッシングチーム
堤防で始めた釣りが、たくさんの獲物、或いは大きな獲物を追いかけるあまり、いつの間にか沖へ出るようになり、更にはとうとう
外洋にまで遠征するようになってしまった人も少なくはないでしょう。。。
・・・・やっぱり少ないかもしれません(笑)
写真をお見せすると「カジキマグロだ」と言われることが多いのですが、カジキとマグロは違う種なのです。
私たちが狙っているのはカジキの方です。
関東近海で釣れるカジキやマグロは秋以降になると益々脂が乗って飛びきり美味しいのですが、ここでは食べるための釣りではなく、
スポーツフィッシング(ゲームフィッシング)としての釣りを紹介しております。
このゲームフィッシングについて世界で統一されたルールを設けて公平に競えるように推進している団体がIGFA(International Game Fish Association)であり、これに則って活動しその普及に努める日本の団体がJGFA(Japan Game Fish Association)ということになります。
こまごましたことは当該サイトにてご確認くださればと思いますが、まず、各地で開催されるトーナメントに出場するには会員として加入する必要があります。
カジキの場合は、チームで釣ります。
メンバーは各々がキャプテン、アングラー、リーダーマン、ギャフマンといったパートを担っており、技術力の結集と呼吸を合わせ一丸となって動作します。
湘南や伊豆にベースポートがあるチームの多くは伊豆諸島近海へアプローチするほか、時には茨城県や和歌山県、沖縄県などで開催されるの大きな大会にまで遠征していくチームもあります。
絶海の洋上で100キロを越える巨体が宙を舞う姿を初めて見たときは、全身に鳥肌が立つようでした。
このモンスターを@どれだけ細いライン(釣り糸)で釣ったか。Aどれだけ早く釣ったか Bどれだけたくさん釣ったかを競うわけで、難易度はとても高い釣りです。
また、小さなカジキはキャッチせず(釣り上げて持ち帰らず)、タグを打ってリリース(逃がしてあげる)した方が大きなポイント数を獲得できるルールになっています。
日本最大の大会は、伊豆下田で開催されるJIBT(Japan International Billfish Tournament )で毎年100艇あまりのクルーザーが参加されます。
人数にすれば600人以上のクルーや関係者になりますから、下田の街は大変盛り上がります。
開会式が終わると各艇はゆっくりと出港し下田沖で合図を待ちます。
「スタートフィッシング」の無線アナウンスとともに一斉に滑走する光景は壮絶ですが、他船の引き波にあおられますのでぼけーっと眺めてるのも危険です。
決められた海域の範囲で各チームが戦略をたてて狙ったポイントに向かい、そこでトローリングを始めるのです。
大会本部と各クルーザーとでやりとりされる無線をきいていると状況がわかります。
一番最初にカジキを釣ったチームには「ファーストマーリン賞」として優位なポイントが与えられるので皆が狙っています。
堤防の釣りも、釣り船での沖釣りも同様ですが、魚にもお食事タイムがあり、この時分は「時合い」といってよく釣れます。
その時合いは潮が程よく流れるとき、水温が何度のとき、いろいろな要素が掛け合わさって始まるのですが、おおよその予想はできるものの、正確に何時何分〜何時までだという答えはだれにもわかりません。
カジキも魚なので同じようにルアーにヒットする時合いがあるようです。
無線に耳を傾けていると次々とヒットコールが飛び交う時があります。
このタイミングを逃したくないですね。
ヒット!
かすかにピュンッ!とラインが持っていかれる音がしたかと思うと、大型のリールがジーッ!っとけたたましく鳴り出します。
ドラグが滑ってラインがどんどんどんどん、どんどんどんどん出て行くのです。
数百メートル出て行きます。。。これ、全部手で巻くんです。
この途中でカジキはジャンプします。
今までヒットしたカジキでジャンプしなかったカジキはいませんから、必ずと言っていいほどの確率でその姿を確認できます。
とんでもないパワーです。
命を懸けた戦いですから、こっちも真剣な気持ちでカジキに向き合います。
チームワークの始まります。
複数流しているルアーをヒットルアー以外全てを素早く回収しないとこんがらがっちゃいます。
アングラーはヒットしたタックルを持ってファイティングチェアーに座ってハーネスを装着します。
無線でヒットコールを入れ、真っ赤なファイティングフラグを掲げることで他の船に注意を促します。
キャプテンは操船とチーム全体の動きを見ながら細かな指示を出していきます。
ファイティングチェアーを後ろで支えて左右動かしながらカジキの方向に合わせます。
ラインの残量、カジキが暴れる方向をキャプテンにサインで知らせます。
カジキが船に近づくと、危機を察知して大暴れ!
ラインが再び引き出されます。
程なく止まるとキャプテンがバックギアに入れ、同時にアングラーが勢いよく巻く。
或いはポンピングしながらじわじわと巻いて船に寄せていく。
うわっ、また引き出されていく。。
これを幾度と無く繰り返すのです。
カジキが弱ってきたなと感じる頃、勝負をかけます。
ドラグを締め、一気にたたみかける。
リーダーマンがグローブをはめた手で直接手繰り寄せます。
カジキが観念するとそこへタグを打ち、少し休ませてからそっとリリースします。
・・・と、まぁすんなりいったケースなのですが、様々なことが起こりえますしハッピーエンドにならない事も多いです。
カジキが船に飛び込んでくるような危険なシーンもありますので、本当に最後の最後まで気が抜けません。
私もアングラーをやらせていただいた機会に最大で5時間20分もファイトした経験がありますが、フックが外れて釣果には繋がりませんでした。
日没も過ぎ真っ暗な洋上での一幕で、自分自身の悔しさもありますが、なによりもチームへの申し訳ない気持ちと、ファイト中にサポートくださった先輩方への感謝の気持ちでいっぱいになりました。
カジキ釣りはまるでちがった種目で、別世界の人たちが楽しむ遊びだというイメージも強いですが、同じ魚釣りですのでベースは共通しています。
偉大な自然の中にちーっぽけな自分がポツンといる感覚ですとか、普段は職種も立場もちがう人間同士が釣りを通じて一丸となれるとか、競い合う仲間同士の助け合い、いつまでも楽しめる環境を守ろうとする意思や力、釣りを楽しめば楽しむほど同時にいろんなことを学べるような気がしています。
まだまだチャレンジし続けます。